「昔は良かったですよね」
散々たるウチの会社の現状を見ると、こう言わずにはいられない。
只今、売上急下降中という状況ですが、過去には潤っている時期もあったんです。
社員は毎月40~50万円の給料を持って帰り、休みもしっかりともらえていた。
それが今はどうでしょう?
30歳過ぎのオッサンが、下手をすれば20万円を切るような低賃金で働かされている。しかもそれほどの安月給にもかかわらず、休みも一切ない。
会社って、たった数年でここまで変わるものなんですね。栄枯盛衰という言葉を身をもって知らされた思いです。
ウチの会社がこれほど落ちぶれた理由。それは「社長が過去の栄光を忘れられない」からです。昔の成功体験を妄信しすぎた結果、時代の変化に対応できていないわけです。
移り変わりの激しい今の世の中、売上を安定させるにはその時代に合った手法を模索し続けなければいけません。
新しい技術や、価値観の変化などによって物の値打ちなんていくらでも変わる。それまで人気のあった商品が、ある日からパタッと売れなくことも全然ある。
でもウチの会社は時代に合わせることをしてこなかった。かたくなに過去の営業スタイルにこだわり続けた。
「今までそれでやってきた」という自負があったのでしょう。一時的な成功体験によって、自分たちを客観的に見られなくなったのだと思います。
そして救いようがないことに、その変わらない企業体質というのは今もなお続いています。20年前もの手法をいまだに捨てきれない。
この会社はもう終わりが見えています。これからもどんどん売上が下がっていき、それでも過去の栄光を忘れられない社長には、ほとほと愛想が尽きる。
我が社の営業スタイルは「いかにお客さんを洗脳するか」
ウチの会社は『営業』を生業としています。
取り扱っている商材は、浄水器やインターネットの回線、ウォーターサーバーなど様々。
自社商品はなくて、いろんな会社と代理店契約を結び、それを販売していくという企業形態です。
訪問先は個人宅が主で企業営業はほとんどやりません。一戸建ての家やマンションをひたすら回っていくというスタイル。簡単に言うと訪問販売です。
1件、1件、叩いて行って、出てきたお客さんに営業をかけていく感じ。
戸別訪問と言う販売スタイル自体がすでに時代遅れ感がありますが、ウチの会社はそれに輪をかけて前時代的なんですよ。
重要なのは商品知識よりトーク力
代理店契約によって様々な商材を取り扱わせてもらっている我が社。
それだけ商品があったら覚えることもたくさんあるだろうと思いきや、そうではありません。
なぜならウチの会社は、商品の性能よりも人とのコミュニケーションを重要視しているからです。「モノの売るより人を売れ」ってやつです。
営業トークをしつつお客さんと距離を縮めつつ、仲良くなったところで商品を勧めるというのが基本的なスタイル。
だから商品知識なんてほとんど必要ないんですね。それよりも大事なのはトーク力。いかに相手の懐に入り込むかです。商品の説明なんて超適テキトー。
お客さんを楽しませて心を開かせて「あなたがそこまで言うなら買おうかな」と話を持って行くのがいつもの流れです。
顧客をダマす手法ばかり追求する会社
本来なら、取り扱う商品については研修を行なって商品知識を深めることが必要だと思います。モノを知らないことには人には勧められませんからね。
でもウチは違う。そんなことより「どうやってお客さんと仲良くなるか」を突き詰めます。
だから会社の勉強会を行っても「この商品のこの性能が、こういった問題を解消して~」みたいな機能的な話は一切なく
- 人に好かれる話し方
- 好感を持たれる表情の練習
- お客さんを笑わせる方法
こんなことばっかり話してます。どうやって顧客が満足するサービスを提供するかなんてことは全く考えちゃいない。
結局、ウチの会社の営業って『洗脳』なんですよね。
言葉で言いくるめて、適当な説明でごまかして、商品を購入するように誘導する。言わば、人を効率よくダマす方法だけを追求してきた会社なんです。
ごまかしがきかない世の中になったことで売上は激減した
「モノを売るより人を売る」
これってビジネス的なノウハウとして聞けば、聞こえのいい言葉かもしれない。
でも実際にその様な営業マンから商品を購入すると、お客さんが買ったことを後悔するケースも少なくない。
だって、このときお客さんが得られる満足って「気持ち良く商品を購入できた」という感情的な部分だけですもんね。
商品性能で選んでないので、お客さんが本当に望んでいる性能とズレが起こることが多い。
結果的に「思ってた商品と違う」となるわけです。
スマホの普及で賢い顧客が増えてきた
近年のスマホの爆発的普及によって「分らないことはスマホで調べる」という行為が当たり前になってきました。
ちょっと前まではパソコンを持ってなければ調べものなんてできなかったわけで、ネットの環境がない人はテレビや雑誌から発信される情報しか目にすることがなかった。
でも今では自発的に自分の知りたいことをいつでも調べられる。これによりダマされる人が減ってきたんです。
営業マンが話すテキトーな商品説明なんて、スマホを使えばすぐにデタラメだってバレます。
ふっかけた商品価格も、ネットで相場を調べればもっと安く手に入ると分ります。
このように上辺だけの営業スタイルではモノが売れなくなってきたんです。ダマしてゴマかして商品が売れるほど消費者はバカじゃない。
それに最近では合理的な考えの人が増え、人情でモノを買うなんて人は減ってきました。純粋にその商品の機能を見て判断するようになっています。
このような背景から当社の売上は劇的に下がっていきました。
情報化が進んだ世の中では情弱にモノを売るしかない
スマホで何でも調べられる世の中になって、口先だけのトークでモノが売れる時代は終わりました。
お客さんに商品を買ってもらうには「本当に良い商品」を「本物の知識」を持って説明しないと売れません。
でもウチの会社がとる営業方法と言うのは、相変わらず相手を言いくるめて販売していくスタイル。
なので、言葉は悪いですが「世間をよく知らない層」をターゲットにしてくことになります。
ウチの営業は普通の人には全く通用しないので、俗にいう情報弱者と言われる無知な人たちを狙うことになる。
騙されやすい人というのはいつの時代もいるもので、手当たり次第に営業をかけていけば、いずれはそのような人に当たります。そこを拾っていくしかなくなった。
しかしこの「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」的な作戦は、ものすごく効率が悪い。小手先のトークが通用するレアなお客さんを、ひたすら足を使って探すという作業になるからです。
結果、営業時間は長くなり、休みもなくなって、売上も下がったので給料も激安と言う労働環境が生まれたわけです。
昔のやり方を変えようとしないので終わりが見えている
とまあ、こんな流れで売上が下がってきたわけですが、それでも社長は今もなお「時代のせいにするな!営業力が足りないからだ!」と昔ながらの営業スタイルを止めようとはしません。
商品知識を深めたり、お客さんに価値を届けるという方向には目もくれず、”表情の作り方”や”人の笑わせ方”など、相変わらず人を言いくるめる方法ばかり指導してきます。
こんな調子なのでウチの会社はいずれは潰れるでしょう。時代に合わせられない会社の行きつく先は倒産しかありません。
あなたの会社にも過去の栄光にすがって、今の現状が見えていない人はいませんか?
「今の上司がそうだ!」というのなら、そのような人に付いて行っても終わりが見えているので、自身の身の振り方を考えた方がいいと思います。
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